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@sinkin_shipのブログ

噛めば噛むほど味が出る 乃木坂46「MVなし楽曲」

乃木坂46は一回のシングルリリースで6曲、最近は7曲リリースして、そのうちだいたい4,5曲がMV付きです。

アイドル楽曲は、というかビジュアルにパラメータを全振りしていると言っても過言ではない乃木坂46だと特に、まず人に勧めるならMVつきの楽曲だろうと思うのですが、なかなかどうして乃木坂は「MVなし楽曲」も美味しい楽曲揃い。
全握ミニライブ披露が終わればBDLぐらいでしかパフォーマンスを観る機会がなくなってしまう悲しき曲たちですが、そんな中から「もっと報われてほしい」楽曲たちを全力でゴリ押ししようというブログです。

 

 

海流の島よ

3rd「走れ!bicycle」収録曲。

まだ初期のあどけないアンダーの子たちの曲で、全体的に爽やかで可愛らしい雰囲気の、ちょっとファンタジーな曲。
情景は具体的に浮かぶけれど、結局分かるような分からないような曲で、48の公演曲っぽいイメージかもしれない。

この曲は康の「強い隠喩」が遺憾なく発揮されているところがとてもよくて、2サビがクライマックス。

海流の島よ

命とは海だ

生きることは荒い波を越えること

当時の、まだ少し陰の強いセンターだった飛鳥ちゃんが、「命とは海だ」と言い切る強さと世界観に物凄く惹かれる。
全体的には可愛く爽やかで、水彩画で全篇描かれた絵本のような曲なのに、飛鳥ちゃんに「命とは海だ」と諭されるという、ギャップと世界観が癖になる曲です。結局どういう曲なのか、分かるようで分からないんだけど、そこがまた。


白い雲にのって

1st「ぐるぐるカーテン」収録曲。
とにかく「みんな笑顔なら世界は平和だよ」というしゃらくせえ曲。でも、アイドルが笑っていてくれたら世界が平和になるってそりゃ真理だわと思う。

きっと愚かな諍いも

眠くなったらしないだろう

体がポカポカしてきて

怒った人もあくびひとつ 

とかね、いいですね、いい具合に脳みそが柔らかくなる。
本当に初期の曲なので、この頃は声が幼いんだけど、そんな甘い可愛らしい声に、「そんな難しいことなんて考えるだけ無駄だよ」と言われると色々と救われるような気がする。

初期の乃木坂楽曲にはこういう、「みんなのうた」で歌われそうな説教くさいラインの曲というのがあって、「心の薬」とか「人はなぜ走るのか?」とかもそう。こんなこというと怒られそうだけど、乃木坂のこの説教くさいラインの楽曲、なんとなく桜井和寿さんに歌って欲しさがある。
メンバーの平均年齢が若かったからこその路線だったのだと思うけど、最近こういうのがないのがちょっと寂しい。

 


やさしさなら間に合ってる

4th「制服のマネキン」収録曲。
昭和歌謡っぽい雰囲気で、女の子の側から、ちょっと背伸びしちゃった恋愛の終わりを歌う渋めの曲。
歌唱メンバーも割と低音が効いたメンバーが多いのも良い。
乃木坂楽曲のスタンダードは「気づいたら近くにいる君が気になってるのに、素直に口に出せない僕」という構図なので、女の子視点の曲ってただでさえちょっとレアなところを、この曲は意識的に「女の子口調」を使用しているのでものすごくテンションがあがる。
この曲調で「あなたのことを憎めたら楽だったのにね」というベッタベタな歌詞を、この時代のこの美少女に歌わせるセンス、好きだな…………

 


吐息のメソッド

8th「気づいたら片想い」収録曲。
ただただ「可愛い」が断続的に 襲ってくる曲。曲も歌詞もまさに王道アイドル曲なんだけど、乃木坂は意外とこういう路線が少ないのでレアです。ドキュメンタリー映画のタイトルにもなった「悲しみの忘れ方」というワードも初出はここ。
歌詞に引っかかるところも特になく、すっと楽に聴ける良い頃合いのc/wだけど、この曲の真髄はパフォーマンスにあり。3rdBDLの映像を観てほしい。もれなく今後30年は健康に生きられそうなくらいのご利益がある。


何もできずにそばにいる

9th「夏のFree&Easy」収録曲。

もし人々に涙流す感情がなかったとしたら 幸せか不幸かどっち?

という歌いだしがもはやクライマックス。

個人的にはいまいちいつまでもピンとこない曲だったけど、乃木坂46の歴史のなかで、常にこう、「ここぞ」という場面でメンバーが意識的に選曲していて、乃木坂ちゃんたちは結構「象徴的な曲」として捉えてるんだなというところが印象的だった。(たとえば松村さんの例の一件の際のラジオとか、橋本奈々未さんのラジオの最終回とか)
たしかに、何かしらの痛みや傷を抱えている人に対して直接的にグイグイいけずに「何もできずにそばにいる」という姿勢はものすごく乃木坂らしいなという気はする。


僕だけの光

15th「裸足でsummer」収録曲。
乃木坂46による乃木坂46観」的楽曲その2というところ。
1番がびっくりするほどネガティブで、「僕の良いところは全然なくてうんぬん」という雰囲気がまさに乃木坂って感じ。「太陽眺めるたび羨ましくなるんだ」という歌いだしの通り、比較対象が太陽なんだけど、スケールがでかすぎる自虐でむしろ一周回って味わいが深い。太陽より役に立つ人間なんておらんやろ。
「いいとこなくても自分を磨くしかないのだ」という、久々に「白い雲にのって」「人はなぜ走るのか?」「心の薬」あたりの初期の説教くさいラインを彷彿とさせる曲で、これが15thでまた聴けたのが嬉しい。
このダイナミックな自虐といい結局根性論が入ってくるところといい、15thは表題が王道の乃木坂ソングだった分、こっちでなんとなくセンターの飛鳥ちゃんに当て書きしているような気もする。

 


孤独な青空

16th「サヨナラの意味」収録曲。
乃木坂46による乃木坂46観」的楽曲その3。
乃木坂史上一番孤独な歌かも知れない。どストレートに「友達がいない」人の歌です。
史上最強の顔面偏差値を誇る美少女集団が、混じりっ気なしの本音で「青春はいつだって虚しい」と歌う。乃木坂ヲタクはこういう乃木坂ちゃんに弱いんや!という、乃木坂の世界観が全て詰まっている。

また、同じように「孤独」を扱ったの楽曲として、 欅坂46の「キミガイナイ」がある。

本当の孤独は誰もいないことじゃなく

誰かがいるはずなのに一人にされてるこの状況

欅坂がこう歌ったのに対し、乃木坂46はこの曲で

打ち明ける秘密もなく

思い悩む憂鬱もないのは何故だろう

と歌う。


かたや欅は「孤独にされている」ことへの文句を言うべき相手が想定されている、いわば「リア充的孤独」であり、乃木坂は「秘密を打ち明けられるほどの人がいない」から「打ち明ける秘密」もないという「非リアの孤独」である。
奇しくも同じ2016年に康によって生み出された楽曲だが、この「孤独」の違いにまんまグループカラーの違いが滲み出ているような気がして、それもまた面白い。

 

Tender days

10th「何度目の青空か?」収録曲。
このブログはこの曲の話をするために書いたといっても過言ではないかもしれない。
「もっと評価されるべき乃木坂楽曲大賞」「空気曲とはもう呼ばせない大賞」オブザイヤー3年連続受賞。

10福神ユニット曲、という、よく言えば安牌、悪く言えば冒険のかけらもないメンバーで、歌う曲が「純喫茶と男の友情」ってところがたまらない。


登場人物は「君」と「僕」と無愛想な喫茶店のマスター(学生運動の英雄だったらしい。)
学生生活の4年間、苦いだけのコーヒーしかない古臭い喫茶店に入り浸って、夢を語り合った「君」と「僕」。
お互い彼女を連れてこないのがなんとなく暗黙のルールになるくらい、俺たちの聖域だったあの喫茶店に、卒業してしばらく経って、久々に行ってみようよと「君」に連絡したのに、返事はない………
という。

 

何がいいって、この激シブなホモソーシャルの話を、「乃木坂46」の「10福神」という、女性アイドルの顔面偏差値トップオブトップが歌うというところである。意味がわからない。シブすぎる。良すぎる。
しかもこんなあっけらかんとした曲調で。最高です。

登場人物が男しかいない(お店に連れて来てもらえなかった歴代彼女というエアーな登場人物はいるけど)、というレア曲なので、まさにMVがないのもこの曲の良さだよな、と思う。
といいつつ、この曲のMVを想像してみるのもまた楽しい。
わたしの脳内MVは、やや褪せた色味で歌詞まんま男二人(とマスター)の青春活劇なんだけど、最後に「僕」は大学前の雑踏で、髪を靡かせたセンター生田絵梨花さんとすれ違うの。それだけ。

妄想MVはともかく、行間の読みがいがある(いろんな意味で)、とても楽しく素晴らしい曲です。

 

当たり障りのない話

17th「インフルエンサー」収録曲。
これ、めちゃめちゃスルメ曲かつ、嵌まれるか嵌れないかは聴く人の生い立ち次第(笑)な面白い曲。
「商店街の本屋で、昔好きだった人と再会したけど、連絡先も聞けないまま、当たり障りのない話だけして別れました」内容としてはこれだけ。
これだけの内容だけれど、康お得意の「超具体的描写戦法」であれよあれよと言う間に一曲に仕上がっている、という不思議。
「二人はスマホを手にはしたけれど LINEを教えあうこともないまま」という歌詞があり、「久しぶりに再会した友達とはLINEを交換していない」というフレーズにダイレクトアタックされるのは最低でもaround25くらいからなのかなあ、というような気もして、なんとなく大人向けの楽曲かもしれない。乃木坂ファン層って意外と若いので、LINEネイティブの高校生とかがこれを聴いてどう思うのかはすごく興味がある。
わたしもだけど、「大人への近道」とか、「制服を脱いでサヨナラを…」とかを聴きながら、こんな若い曲に感情移入ばっかしてていいのかなあと思ってしまう方、「サイレントマジョリティー」がどうにも対象年齢外に感じてしまう方向きの曲かもしれない。

 

 

 

 


以上9曲が昨今のマイベストオブ「MVないけど美味しい」乃木坂楽曲でした。本当はまだまだ大好きな曲いっぱいあるけど、また思い出したタイミングで纏められたらと思います。
この辺の曲はなかなかライブ映像が残りにくいのがとても悲しいので、4th、5thのBDLが一刻も早く円盤化されることを祈っている………!