fools rush in

@sinkin_shipのブログ

ペンを天に還す日のこと

 

 

「公演終了時には、公共交通機関が全てストップしている可能性があります」

乃木坂46版ミュージカル「美少女戦士セーラームーン」の9月公演大千秋楽。赤坂ACTシアターの入口で耳にしたのは、そんなアナウンスだった。

日本列島に一体なんの恨みがあるのだと言いたくなるほど、台風24号が綺麗に列島を駆け抜けた9月30日。新幹線は朝一番で止まっており、とっくに帰る足を失くしていたわたしには、不謹慎ながらちょっとワクワクするアナウンスでもあった。

実際に閉演時には都心でも止まっていた路線があったりと色々ギリギリの状況で、勿論公演中止の可能性もそれなりにあっただろうと思う。それでもあの日、幕を開けてくれたことをわたしは本当に感謝しています。

 

 

最後の変身

おそらく帰宅難民の大半は「いっそこのままシルバーミレニアムで永遠に暮らしたい…」と本気で考えていたと思う。(知らんけど)

とはいえ一度幕が開いたら、決して引き返せないのが舞台。第一幕は本当に風のように過ぎ去っていってしまう。

第一幕は、うさぎちゃんが他の4人の戦士と出会うまでのストーリーを中心に進む。うさぎちゃん自身の覚醒と初変身、そして4人の戦士がうさぎちゃんと出会い、同じく初変身(ヴィーナスは初登場)するまでが描かれている。

この第一幕がわたしは本当に本当に本当に好きで、何度見ても第一幕は体感1秒もないくらい一瞬で、何が好きかってこの変身シーンの曲なんですよ…

ベースは同じ曲なんだけど、戦士ごとに雰囲気は全然違って、メロディーラインも戦士が登場する順に少しずつ複雑に、よりカッコよくなっていく。新しい戦士が登場するたび、「もっと強い仲間が来た!」と思える興奮がたまらない。これぞ戦士モノの醍醐味だなと思う。この辺は壊れるほど文字で書いても100分の1も伝わらないと思うので、どうかぜひ映像で観てみてください。

 

そんな変身シーンを観ながら感じていたのは、今日が乃木坂セラミュの大千秋楽であるということはつまり、「これが彼女たちにとって最後の変身になる」ということ。

乃木坂版セラミュでは、これまで「セーラームーン、そしてセーラームーンミュージカルの世界に幼い頃から憧れていた」と語っていた彼女たちが、実際にセーラームーンの世界でセーラー戦士として輝いている。その姿を間近で見られることは、本当にこの上ない幸せだった。

だからこそ、今日の変身が解けたら彼女たちはもうセーラー戦士になることはなく、このキラキラの衣装に袖を通すことはないのか……ということがただただ身にしみた。

しかも第二幕で四戦士はセーラームーンを救うべく、変身のためのペンを投げ出すので、実際にセーラームーン以外は変身能力を失くしてこの舞台が終わるという。ニクいストーリーですよね。

 

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 最後のカーテンコール中もそう。

ず〜〜っと、こうして幕が下りた後、彼女たちがその衣装を脱ぐときのことを考えていた。

……と文字にするとだいぶヤバイ人ですが、でもあるよね?分かるよね?

小さい頃になりきりセーラームーンワンピースみたいなのを着たときのあの「脱ぎ難さ」を、わたしたちの世代は味わったことのある人も多いんじゃないかなと思う。もうとっくにそんなの忘れていたのにそういう感情が突然頭に蘇って、ああ彼女たちがこれから味わうのはそういう寂しさなのか…と切ない気持ちになった。

前日TEAM STARの寺田蘭世ちゃんが「カツラを取るまでは泣きません!」ってカテコで挨拶した話も頭の中にずっと残っていたけど、きっと彼女たちはあの空間で、そういう風に「セーラー戦士でいられる時間」を噛み締めていたのかな…

 

 

 月の魔法が解けても

 終幕後の推しメン、高山一実ちゃんのブログ((´-`).。oO(出会ったことは全て全て全て | 乃木坂46 高山一実 公式ブログ)がやっぱりいつまでも感慨深くて、また何度も読み返している。

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 これは初めてセーラーマーズになった日。

今はこの時の100000倍
火野レイちゃんが好き!

 たぶんメインビジュアルを撮った日だと思うけど、こうやって改めて見てみると、たしかに大千秋楽で見たマーズとは全然雰囲気が違う。

これは5月からの5ヶ月間で、たかやまさんが「セーラーマーズ」そして「火野レイちゃん」に息を吹き込み続けた結果だと思う。

 

 

9月公演は、6月公演から全員がものすごく進化していて、同じ言葉とは思えないくらい前より響いた言葉たちもあった。

正直なところ、9月は「6月観たもの」がまた観られる!と思って劇場に行ったのだけど、そこで観たものは全然違っていた。6月の先に9月があって、6月公演を重ねた上に9月公演の輝きがあって、6月から9月の間もずっとずっとセラミュの日々というのがキャストの日常に流れていたことを実感した。

2018年の10月がきて、たとえセーラー戦士に変身できなくなってしまったとしても、乃木坂46版セラミュというコンテンツがこの世に生まれ、乃木坂ちゃんたちがセーラー戦士として5ヶ月間歩んだことは、セーラームーンという作品が歩んだ歴史の中に残る。

たとえ変身するためのペンを失っても、それまで手にしたものは決してなくならないだろう。

 

時間の流れと、それによって積み重なってきたものというのはハッキリと説明できなくとも確かに存在して、そしてそれは永遠に失われることはないのだと思う。 

 

どれだけ目を背けようとしてもどうにもならないくらい今は別れの季節で、だからこそ今そう思えることはちょっとだけ希望だった。

 

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乃木坂版の戦士衣装は、 スパンコールがざくざく敷き詰められていて本当にかわいい。


TEAM MOONの山下美月ちゃんは、舞台の幕が開く寸前まで、舞台袖で「あたし、月野うさぎ!」「月野うさぎ!」「月野うさぎですよね?」と何度も自分に言い聞かせていたのだという。
彼女に限らず、ほかの戦士たちもこの衣装のキラキラを身に纏いながら、「わたしはセーラー戦士」と自分に魔法をかける瞬間があったのかもしれない。

 

セーラー戦士へと変身する姿は、やっぱり何度見てもアイドルとしての彼女たちの姿と重なる。きっとこの先も、セーラー服じゃなくても、リボンが付いていなくても、キラキラ輝く衣装を身に纏い、アイドルとして戦い続ける姿にまたわたしは何度でも救われるのだろう。

セーラー戦士として、そしてアイドルとして、常にキラキラの衣装に身を包み戦い続ける乃木坂ちゃんたちの尊さに、ただただ触れ続けた9月公演でした。

 

改めて乃木坂46版ミュージカル「美少女戦士セーラームーン」、本当に完走お疲れ様でした!ありがとうございました!

 

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