Even out of numerous stars - 乃木坂46版セラミュ、キラキラの源泉を探して
寝ても覚めても物思いにかられるような、何度も何度も繰り返し思い出しては余韻に浸ってしまうような、圧倒的な輝き。アイドルのキラキラをこれでもかと凝縮した夢のようなステージで、観劇から1週間経った今もなお、彼女たちがスカートを翻すときのスパンコールの煌めきが脳裏に焼き付いて離れない。
今回の舞台は天王洲銀河劇場、乃木坂46版ミュージカル「美少女戦士セーラームーン」。
乃木坂ちゃんを追いかけ始めてから今まで、数え切れないほどのキラキラに触れてきたけれど、また新しい強烈なキラキラに出会うことができました。乃木坂セラミュ、最高やで……!
「アイドル興行」としての存在意義
今回の乃木坂版セラミュは、その名の通りメインキャストとなるセーラー戦士5人を乃木坂46のメンバーが務めている。Wキャストなので総勢10名の乃木坂46メンバーが出演していることになり、いわゆる「アイドルもの」とか「アイドル興行」と呼ばれるコンテンツであることは間違いない。
「アイドル興行」というレッテルは往々にして、揶揄的なニュアンスを含みがちだ。実際に今回もクオリティへの厳しい意見はたくさん見かけたし、確かに「ミュージカル作品」として質の高いものだったかと聞かれたら、わたしも決してそうは思わない。
それでもこの作品がこんなにも胸を締め付けるのは、「アイドル興行」としてちゃんと成立していて、そしてこれ以上ないくらいキラキラしていたからだ。
「アイドル興行」と呼ばれる作品には、「演者がアイドルである」ということが作り手と観客の間に共通認識として存在している。それが吉と出るか凶と出るかは作品次第だが、乃木坂版セラミュにとっては紛れもなく前者だった。
降って湧いた使命に翻弄されつつも、それを懸命に果たそうとする少女たちの物語。「普通の人生」をかなぐり捨てて戦士を選ぶことの決断の重さや、戦士となったことで彼女たちがまた救われてもいること、そして「運命の5人」とも呼ぶべき仲間たちの存在、……全部全部、アイドルにも通ずるというか、アイドル人生そのもののようなストーリーである。
実際に劇中に「(ここで戦えるのは)私たちしかいないもの」「恋よりも大切な使命があると誰かが耳元で囁く」というような強いフレーズがバンバン出てきて、キャラクターの人生と彼女たちの人生が重なって見えた瞬間は震えるような感動があった。
もちろん、アイドルの持つストーリー性の力なんて借りずとも、そもそも「美少女戦士セーラームーン」という作品そのものが偉大すぎるほど偉大なコンテンツであることは百も承知である。それでも世の中にたくさんある物語のうち、この作品が乃木坂ちゃんの下に降ってくることの意味をすごく感じたというか、世の中に「アイドル興行」がある意味みたいなものを、わたしは確かに感じた。
世のタイアップがそんなに綺麗にストーリーありきで決まる話ではないことも分かっているけど、それでもこうして実現した以上、やっぱり乃木坂セラミュというコンテンツがこの世に生まれる意味があったと少なくともわたしは思うし、そう思わせる説得力があった。
そしてこのステージ上での「説得力」でもって、乃木坂セラミュをぐっと引っ張っていたのが、TEAM MOONセーラームーンの山下美月ちゃん。前からかわいいな〜と思いつつちゃんと彼女を観たのは初めてだったのですが、あまりにもハマり役だったのでちょっと触れさせてほしい。
登場した瞬間から、「セーラームーンだ!!」って思った。昔アニメや漫画で観た、セーラームーンそのまんま!
表情の変化が遠くから見ていても分かるくらいはっきりしていて、喜怒哀楽にとにかく全力。「うさぎちゃん」としてのお茶目でおてんばなきゅるきゅる感も、セーラームーンとして試練にぶつかるときの苦しみや悲しみも、タキシード仮面様を前にしたときのパッと花が咲いたような笑顔も、セーラー戦士たちのリーダーとして4人を従え敵に立ち向かうときの頼もしさも、そして物語全体を包み込む大きな優しさも、びっくりするほど全てが鮮やかで眩しくて、目が離せなくなる。とにかくキラキラ。
なるちゃん役の山内優花さんも彼女を「真ん中に立つ女の子の絶対的可愛さを持つ*1」と評しているけれど、本当にそう!
真ん中に立つ女の子のキラキラ感って理屈じゃないんだ、ということを目の当たりにしたし、その絶対的な主人公オーラが、これまた偉大なヒロインであるところのセーラームーンの存在感とぴったり合致して、 最初から最後まで本当に目が離せなかった。
あまりにもキラキラ眩しすぎて、途中から美月ちゃんが「美月」という名前を持って生まれてきた奇跡に感動しはじめたし、大袈裟でもなんでもなく、彼女はセーラームーンをやるために生まれてきた女の子なんだと今も本気で思っている。
そしてもちろん「オーラ」とか「生まれ持ったもの」とかそういう抽象的な感覚に限らず、彼女のセーラームーンとしての役作りも凄まじかったことも伝えておきたい。あの声、本当に「うさぎちゃん」そのものだったよ……
もちろん美月ちゃんムーン以外のキャストを務めたメンバーも、それぞれが本当にセーラー戦士としてこれでもかというくらいキラキラしていたし、普段のアイドルとしてのキラキラを、セーラー戦士としてのキラキラにちゃんと昇華していて、ステージの上では最強の戦士たちだった。
わたしは乃木坂のヲタクなので、どうしても「乃木坂46がセーラームーンと出会った」という文脈で話をしてしまうけれど、同時にちゃんと「セーラームーンが乃木坂46と出会った」ことにも意味があってほしいと思う。し、実際にちゃんとあったと思うのです。両者が2018年、このタイミングで出会ったことで、お互いに良い化学反応が起きていたらいいな……
夢を叶えたあなたへ
そしてなんといっても推しメン、TEAM MOONでセーラーマーズを務めた高山一実ちゃんの話。
高山さんが昔からセーラームーンの熱心なファンだということは、わたしたちヲタクの間では有名な話だった。だから企画が決まったときはもちろん、実際にセーラーマーズ役を務めることが決まったときも、本当に本当に嬉しかった。
念願のお仕事を叶えている姿を見ることはとても嬉しい。推しメンが嬉しそうにしている姿を見るのが嬉しい。そうして結実した今回の乃木坂セラミュが、とても素敵な作品となったことがこの上なく嬉しい。嬉しいの大渋滞、嬉しいのゲシュタルト崩壊や……
初日公演の翌日に、彼女が更新したブログ*2を今でも何度も読み返している。
セーラームーンとのタイアップコンテンツは、アイドルとのコラボに限らずこれまでにもたくさんあった。そんな風に長く愛されてきた歴史を持つ作品が、25周年の節目にミュージカルを作ることになり、そしてそのタイミングで白刃を立てようと名が挙がるくらい、勢いのあるアイドルグループとして乃木坂46の存在があって、そしてそこに高山一実ちゃんが存在した。
たくさんの偶然の重なりの中でこの乃木坂セラミュの企画が生まれ、高山さんがセーラーマーズの役を掴んだ(そして恐らく企画段階からかなり関わっている)ことは、タイミングの良さだけではなく、そこに彼女が乃木坂46のメンバーとして積み重ねた歴史が一緒になったからこそ初めて生まれた奇跡だなと思う。
高山一実ちゃんのセーラーマーズはとにかくスタイルが圧倒的に美しく、これまた「ハイヒールでお仕置きよ!」という台詞のパワーたるや、という絶世の美少女戦士だった。凛とした佇まいと強さを兼ね備え、歌声も滑舌もびっくりするくらい良くなっていた。そして揺れる髪の先から指先、つま先までセーラーマーズであると同時に、「セーラーマーズ」への愛に満ちていた。あとジェダイトときゃっきゃするシーンの可愛らしさといったらなかった。
仮面舞踏会で踊るシーン、雑踏に紛れるシーン、どんなにたくさんのキャストがわっと舞台上に現れるシーンでも、推しメンには真っ先に目が気づくから不思議だ。暗転していても分かる。ヲタクってすごい。
幾千万の星から あなたを見つけられる
偶然もチャンスに変える 生き方が好きよ
「ムーンライト伝説」の中で、昔から一番好きなフレーズだけど、乃木坂セラミュを観てから、この歌詞はあなたのことだと思うようになりました。
高山一実ちゃん、お疲れさま!キラキラ眩しいあなたのセーラーマーズがずっと大好きです。
おわりに
夜公演が終わって劇場を出たら、さっきまで見ていたはずの東京タワーがあんなに遠くに。
「天王洲銀河劇場」というお名前もそうだけど、本当に運命的なロケーションだな〜と思ったり。
「月から見ると この星は
どんな風に見える?」
「青い水晶球のように 見えるわ」
次は9月の赤坂でお会いしましょう。