fools rush in

@sinkin_shipのブログ

乃木坂46の好きな歌詞10選①

これ以上ないくらいタイトル通りのブログ。

乃木坂46を全然知らない人に「この曲から聴いて!」と言えるほどメジャー路線でもなく、かといって重箱の隅をつつくような「隠れた名曲」というわけでもなく、表題曲もカップリングもアルバム曲もなにもかもごったまぜですが、とにかくこの歌詞について語らせてほしい。

そんな「優勝フレーズ」10選、ちょっと長くなりそうなのでとりあえず前半5曲です。

 

※19thシングル「いつかできるから今日できる」発売時点。

 

①Tender days

○10th「何度目の青空か?」c/w
○10福神のユニット曲

苦いだけのあのコーヒー

ちっとも美味しくなかったけど

僕らが未来を語り合う時

ちょっと大人の味がした

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「福神曲」という最も冒険しない、逆に言えば乃木坂最前線のメンバーが歌うのが「純喫茶と男の友情」という激シブさがたまらない曲。 

この曲には歌詞のすみずみに「もう戻らない青春」の切なさとキラキラがしみ込んでいるけど、特にサビ頭の「苦いだけのあのコーヒー」に、このテーマのすべてが凝縮されている。

「苦いだけのあのコーヒー」というフレーズを聴いた人が思い浮かべるのは、きっとまずいコーヒーの記憶に限らない。

高校生の時学校帰りに寄っては話が尽きなかったマックとか、大学生の時に試験勉強をしたサイゼリヤとか、とにかくそんな、若くてお金がない頃の「長く一緒に居るためだけの場所」の思い出が、この「苦いだけのコーヒー」というワードで一気にぶわっと蘇ってくる。

おしゃれなカフェや、居酒屋や、それなりのご飯屋さんが立ち並ぶ通りであえて安いお店を選んでいた「もう戻らないあの頃」の思い出を、聴いた人にそれぞれの形で思い起こさせる、魔法のような曲です。

 Tender days、とにかく本当に好きすぎて、もっと陽の目を浴びてほしいという気持ちと、「この曲の良さは自分が一番知っているんや・・・」とこっそり隠しておきたさがいつも喧嘩する。乃木坂楽曲界の西野七瀬みたいな曲です。

 

②今、話したい誰がいる

○13th「今、話したい誰かがいる」表題曲

片想いなら黙っていればいい

両想いなら気づかなければいい

「こんなどうしようもない僕の前にきみが現れた」「好きだけど伝えるのは怖い」みたいな、乃木坂楽曲の「乃木坂らしさ」的な要素をこれでもかと凝縮した曲。

ありふれたテーマで、一見「ああいつもの感じね」と流してしまいがちだけれど、この曲はとにかく対句が美しい。様式美のストーリーが歌われる中に、ぐっと耳を傾けてしまう強さがしっかり備わっている。

1番の「諦めるなら一人でいいけど 夢を見るなら君と一緒がいい」というのもかなりのキラーフレーズですが、そのフレーズを受けて、さらにアップグレードしてくるのがこの2サビ。
なにも難しい言葉は使われていないのに、こんなん思いつかないよ・・・となる悔しさ。

人間ダメと言われたらやりたくなってしまうように、とにかくこの恋を結実させないという方向へ紡がれた言葉だからこそ、より焦がれているのが伝わってくる。乃木坂楽曲で一、二を争うくらいの美しい歌詞だなと思います。

 

 

③音が出ないギター

○3rd「走れ!Bicycle」c/w

気に食わないなら出て行けばいいさ

少年時代憧れたロックは俺のプライド

これを、「リセエンヌ」と謳われていた3rd当時の乃木坂46が言い放つのに痺れる。
可愛らしいアイドルがお仕事で使う乱暴な言葉というのは、どうしてこんなにときめくんだろう・・・

この曲、乃木坂46に嵌って結構早々に出会った曲で、初めてこんなにアイドルに入れ込んじゃってどうしよう?なんて思っていたころに聴いたので、「気に食わないなら出て行けばいいさ」というフレーズがめちゃめちゃ刺さったのを覚えている。 観客を前にした歌い手の言葉なので、まるで乃木坂ちゃん自身に言われているような気分になるのである。

そんな風に、どちらかというと「思い出補正」味の強い思い入れですが、「好きな歌詞」と言われると割とすぐ候補に思い浮かぶ上位の曲。やっぱりどうしても好きだったから出て行けないまま、こんなブログを今日も書いているヲタク4年目であります。

今ではBirthday Liveくらいでしか披露されない曲で、年を重ねるごとに表現がどんどん良くなっていくので毎年楽しみにしているけれど、なんだかんだ1st Birthday Liveの「気に食わないなら出ていけばいいさ」が一番好きかもしれない。縦ノリもボロボロで、ちょっと面白いくらいだけれど、それが胸に迫るというか。当時のことは想像することしかできないけれど、まだまだ全方位がアウェイに近かったあの頃の、彼女たち自身の叫びだったんじゃないか、なんて錯覚してしまいそうになる。

そんな風に、時々つい「まあアイドルだから」と「アイドル」という言葉を免罪符みたいに使ってしまうときに、ぴしゃりと叱りつけられるような気分になるフレーズである。

 

 

④強がる蕾

○14th「ハルジオンが咲く頃」c/w
○このシングルで卒業した深川麻衣ソロ曲。

思い出に負けないように

顔を上げて 微笑みながら

卒業メンバーのソロ曲というのは、それがどんな歌であれ悲しい。

 そのアイドル個人に最も寄り添った曲なのに、その曲が歌い込まれることは決してないという永遠の矛盾。一番パフォーマンスに触れる機会は少なく、むしろ本当に卒業のその時きりなのに、受け取るヲタクの心には永遠に残る。そしてヲタクはその後どんなに焦がれても、それを記憶のなかで無限に再生するしかないのである。

この曲もそんな切ない運命を歩んだ曲ではあるけれど、楽曲そのものは新たな旅立ちへの清々しさに満ちている。一見深川さんが上京したときのことを思わせるようなストーリーの上に、わたしたちは更にこれから彼女が迎える新たな旅立ちを重ねて聴くわけで、相変わらずひとつの曲にたくさんの情景を滲ませるのが本当に上手い。そんなこの曲の真骨頂はやはりこのフレーズにある、と思う。

写真集売上ランキングを席捲しレコード大賞でも最優秀賞を獲得するなど、2017年が乃木坂46にとって大躍進の一年だったとすると、 深川麻衣さんが卒業した2016年6月のタイミングは、まさに上昇気流の勢いがどんどん加速し始めた時期だったように思う。いよいよ成功が見え始めたルートから、ひとりで飛び出すことを選ぶのは、どれほど勇気が要ることだろうか。そんな彼女に贈られた、「思い出に負けないように顔を上げなさい」という言葉。

グループアイドルを卒業していったメンバーの、酸いも甘いも見届けた康から贈られるからこそ味わいを増す、現実的で厳しくも愛のあるメッセージだなと思うのです。

 

 

君の名は希望

厚い雲の切れ間に光が射して

グラウンドの上 僕にちゃんと影ができた

○5thシングル「君の名は希望」表題曲

透明人間と呼ばれていた「僕」を見つけてくれる「君」が現れた、という、これまたベッタベタなテーマの曲。ただ、このあまりにもありふれたテーマを歌っても、ありふれた楽曲として埋もれてしまわないところに、やはり康の魔法がある。

この曲が名曲とされる要素は他にもたくさんあるとは思うけれど、わたしが一番良さを感じるのは、「透明人間」という言葉を無駄遣いしていないところだ。

クラスで目立たない存在、空気のように誰の気にも留められない存在としての「透明人間」という比喩自体は、手垢のついた表現だ。けれど、この曲ではそんな設定を冒頭に説明するため、というだけでこの言葉を終わらせない。それが現れているのが、このフレーズである。

居場所のない苦しみから「君」が掬い上げてくれたことに、「透明人間」は「僕にちゃんと影ができた」と発見することで気づく。

そして大切な存在ができたからこそ、そばにいて欲しい人がそばにいない、という「新しい孤独」を知り、2番の

悲しみの雨 打たれて足下を見た

土のその上に そう確かに僕はいた

 へとちゃんと物語が続いてゆく。

だれかを恋しく思うことの前には、そもそも自分自身を一人の人間として尊ぶことがある。

壮大すぎるほど壮大なサビへ流れていくためのBメロに、「透明人間」だった「僕」が、地面にちゃんと足をつけて生きていることに気づくストーリーが敷かれている、そんな奥行きが堪らなく好きだ。

 

 

 以上前半5曲でした。残りの5曲も近日中に書きたい。

 

 

こうやって集めてみると、 わたしが康の詞に惹かれる要素、というのは「シンプルに情報量が多い」「ひたすらに洗練された様式美」、「全てがミニマルに完結している」、「冗長だけどその無駄さが天才的」、「広告的な良さがある」くらいの項目に分かれているなあと思う。

「いやそれはないわ…」と本気で思うときもあるけれど、それと同じくらい、いやそれ以上に、とにかく常に秋元康詞に完全敗北している。

 

今日も今日とて康の手のひらの上。