fools rush in

@sinkin_shipのブログ

3年前の夏

生まれて初めて、死にたいと本気で考えたことがあった。



3年前の夏。大学4年の夏。就職活動が終わらなかった夏。
そして、わたしが乃木坂46と出会った夏のことである。



「なぜ乃木坂46が好きなのか?」とよく聞かれる。
わたしは大抵、「彼女たちが頑張っている姿を見ると、自分も頑張ろうと思えるから」と答える。
間違いではない。
けれど、それは「応援しているアイドルが他でもない乃木坂46であるのはなぜか?」という問いの答えではない。

なぜ乃木坂46なのか?その答えは、簡単である。
そのとき手を差し伸べてくれたのが乃木坂46だったから。

別に今まで他のアイドルもそれなりに好きだったし、例えばそこで出会ったのが他のグループだったなら、3年間追いかけたのはそのグループだったかもしれない。でも、その時わたしが出会ったのは、乃木坂だった。うっかり乃木坂に救われてしまった。だから乃木坂のおたくでいる。それだけ。


生駒里奈ちゃんと松井玲奈ちゃんの交換留学が決まって、初めて松井玲奈ちゃんが居る乃木坂46のMVが公開された日。新しいエントリーシートを書くことも、卒論のための研究を進めることにも気乗りせずネットサーフィンをしながら、たまたま、それがYouTubeのトップページで目についた。

乃木坂にいる松井玲奈ちゃんが見たさにたまたま、ほんとうにたまたま開いた「夏のFree&Easy」のMVは、暴力的な可愛さだった。
3色のチェックワンピース。センターで踊る子に与えられているのは勿論赤である。でもそこで黒を着ている松井玲奈ちゃんは風格も段違いだったし、センターの赤に対して青を着ている白石麻衣ちゃんのきれいどころ的なポジションも捨てがたい。白石麻衣ちゃんとセンターの七瀬ちゃんを挟んで反対にいるショートカットの子もとてつもなく美人で、彼女は橋本奈々未ちゃんというらしい。彼女も黒が似合う。
2列目の端でようやく見つけた生駒里奈ちゃんは赤。分かる。主人公感があるし・・・


そこからはジェットコースターのようだった。


終わらない選考を繰り返し、眠れないというより眠りたくない夜は、毎晩乃木どこを漁っては観ていた。
今までは引っ込み思案で何もできなかった西野七瀬ちゃんが、マカオタワーでの頂上で決意した顔と、飛び降りた瞬間のことは、今でもよく思い出す。ここで負けてはいけないと、このまま終わってはいけないと、思わされた瞬間だったから。


それからもいくつもの選考に落ちた。真夏に毎日ストッキングを履いてリクルートスーツを着るのは苦行以外のなにものでもない。大学ではもう誰もスーツを着ていなかった。選考からの帰り道、少し道に迷っただけで大通りを歩いているのに涙が止まらなかった。このまま車に轢かれてしまいたいと何度も思った。


それでも毎日選考に行った。
30分の面接を乗り越えたご褒美はいつも一人カラオケで、スーツ姿でカラオケに行って、いつも「夏のFree&Easy」を歌った。

臆病な自分よ生まれ変われ!

ああ 自分を偽って生きることより
そう 苦しみながら君は君の道を行け!

悲しむのなら 後でもいい
立ち止まるな 振り返るな

実際どういう曲か、ということは考えていなくて、ただひたすらこういう言葉たちを噛みしめるように何度も聴いたし何度も歌った。
曲の聴き方としては大いに間違っていると思う。

それでもこのとき、もうわたしは誰にも助けを求められなくなっていて、そんなわたしを乃木坂ちゃんが与えてくれた言葉だけが助けてくれた。

乃木坂46、9枚目シングル「夏のFree&Easy」。
今振り返れば、確かに大したことは歌っていない曲だなあと思う。
歌詞が下品だとか、AKBぽいだとか言われていて、あんまり表題曲の中で人気がある曲だとは思えない。

それでも、わたしは人生のなかで、乃木坂46の曲をどれかひとつ選ぶならば、絶対にこの曲を選ぶし、人生のベストアルバムには必ず入れると決めている。



そしてそれからついに丸三年が経つ。
18thのMVが発表になったらちょうど。

今も、当時のことを思い出すとしんどい。
この時期にスーツを着て暑そうな就活生を見ると胸が痛い。
妥協して入った今の会社はとても良いところだけれど、合同説明会の広告を街で見かけるたび「本当に行きたい会社がこの中にあるのではないか」と探してしまう癖が抜けない。ずっと迷いながら生きている。

それでもいつもこの曲と、そして乃木坂ちゃんが教えてくれた世界がある。
しんどいときはいつも助けてくれるし、かといって乃木坂ちゃんがくれる世界しかわたしにないわけでもない。(たぶん)

あれから今日までに松井玲奈ちゃんも卒業したし、黒いワンピースを着ていたショートカットの美人も卒業してしまったし(「人は必要なときに必要な人に云々」は「ほんとにな!!!」と思う)、ライブのチケットは取れなくなってしまったし、ついに乃木坂ちゃんは東京ドームの舞台に立つという。

今の熱量のまま、この先も好きでいるかは分からない。
でも、乃木坂ちゃんという名の船が沈むまで、わたしは最後まで乃木坂ちゃんのことを大好きでいる。

夏が来るたび、夏のシングルが発売になるたび思い出すのです。
あの夏はしんどかったと。

でも今はちゃんと楽しいから大丈夫。これからも大丈夫。
もうしんどい現状を変える力も、ちゃんと乃木坂ちゃんにもらえている。